木造住宅は構造計算されていない!? №2【熊本~低燃費&高性能・子育て住宅】

前回のつづきです。

構造計算しなくて耐震性などは大丈夫なのか?

木造2階建て住宅等の四号建築は前述のように構造計算が義務づけられておらず建築基準法施行令40~49条などの技術基準いわゆる仕様規定を満たせば良いとされています。それではこの仕様規定はどの建物の強度は確保されるのか解説します。

壁量計算:

木造住宅の耐震性の規準で最も有名な規定で、耐震性については床面積に応じて一定以上の筋かい等の耐力壁を設ける様に決められています。しかしこの壁量の規準を満たした状態の建物を構造計算してみると、20~40%程強度が不足します。これは耐力壁の他の壁、雑壁もある程度地震の力を受け止めてくれる事を前提にしているためですが、最近のリビングの広い間取りや採光や導線のために開口部が大きく多く、雑壁の効果はあまり期待できません。

4分割法:

筋かい等の耐力壁の総量のみを規定してると、採光のため南側の壁が少なく、開口の少ない北側の耐力壁が多い偏った建物になります。阪神・淡路大震災でこのような偏った壁配置をした住宅がねじれて倒壊する被害が多く見られました。この対策として告示1352号で耐力壁をバランスよく配置する4分割法という規準が定められました。しかし、この規準は構造計算でいう偏心率0.3以下を実現できるよう取り決めされたものですが、偏心率0.3というはかなり偏りの大きな建物で構造計算では一般に半分の偏心率0.15以下で設計されます。

柱頭柱脚金物:

阪神・淡路大震災で木造住宅の多くが柱が土台から引き抜けて倒壊してしまう被害が生じた事を受けて、柱の柱頭柱脚に引き抜き防止金物を設置する規定が設けられました。俗にN値計算という略算が行われる事が多いですが、あくまで略算のため、構造計算した場合と比べると金物の強度が不足したり、逆に金物が過大になっていたりします。

梁の強度:

木造2階建て住宅等の四号建築では2階床や屋根の重量を支える梁について具体的な規準がありません。スパン表という早見表やプレカット工場任せになっている場合も多いかと思います。しかし、こうした住宅の検討を依頼されて強度やたわみの計算をしてみると強度や剛性が不足という結果になる事が少なくありません。 木造の場合竣工直後は大丈夫(に見える)であっても、木材というのはクリープ現象(力を長期間かけ続けるとだんだん変形が大きくなっていく現象)を起こすため、何年か経ってから二階の床が傾いたり壁のクロス割れ等の欠陥が生じるリスクがあります。

床や屋根の計算:

阪神・淡路大震災で木造住宅は筋かいなどの耐力壁が足りていても屋根や床の強度が足りず、耐力壁が地震に耐える前に建物が大きく損傷してしまう被害が出ました。これを受けて構造計算では床や屋根の強度計算も行うようになりましたが、仕様規定では施行令46条3号で曖昧な規定がされているのにとどまっています。2階床は24~28mmの厚手の構造用合板を使った強度の高い根太レス工法が普及しているものの、それ以外の屋根や下屋、ルーフバルコニー等は依然弱点を抱えたままになっています。

基礎:

基礎についても、必要な地耐力が定められている程度で安全性を確保するための具体的な規定はありません。瑕疵担保保険の技術基準である程度強度を確保する規定が設けられていますが、点検用の開口部や大きな窓の下、筋かい等の耐力壁の部分の地震時の強度などに不十分な箇所が散見されます。このため数年後や震度5強以上の地震のさいに大きなクラックが入るリスクがあります。 一般に安全性の検討を簡略に済ませる場合、万が一にも強度不足にならないように詳細な計算をしたときに比べて高い安全率が設けられていますが、木造2階建て住宅等の四号建築の仕様は構造計算をしたときよりも安全率が全般的に低くなっています。一時予定されていた四号特例の廃止もこの事実を懸念してというのが一因にあると思われますが、平成19年6月の建築基準法改正に伴う混乱の影響か廃止そのものが棚上げされたままです。

壁量計算図表例2

木造2階建て住宅の壁量計算図表の例 耐震性などの強度検討はこれ一枚でおしまい

ツーバイフォーは大丈夫なの?

結論から言うと、よほど無茶なプランをしていない限り耐震性については大丈夫です。ツーバイフォー工法の2階建ては木造と同様に確認申請で構造計算書の添付が免除されていますが、外壁と中の間仕切り壁そのものが面として地震に耐える構造のため、普通にプランをしていれば構造計算をかけてみても十分な耐震性をもった建物ができあがります。また、ツーバイフォー工法は告示1540号にて木造に比べて細かく仕様が決められているのでその点でも耐震性は有利といえます。阪神・淡路大震災で木造の脆弱さが指摘された一方でツーバイフォー工法の耐震性の高さが注目されましたが、これは設計者が意識しなくても十分な耐震性が確保されるというツーバイフォー工法の利点が発揮されたからといえます。

参照 i-木構

August 27 , 2014 , 18:34 PM

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